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AUC版PBWをやってみよう企画のリプレイバックナンバーや、AUC関係の管理人のSSを保管している場所です。
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■本文


 まだ夕暮れと言うには早いくらいの曖昧な時間。
 街道から逸れたでこぼこ道を進む、風変わりな荷馬車の姿があった。
 旧街道沿いのまばらな林から道が延びてはいたが、もう使う人も殆ど居ないのだろう荒れ放題の道を、がたごとと派手に揺れながら進む荷馬車。
「ば、馬車って揺れるんだね~」
 ずれまくる眼鏡を押さえながら、ちょっと疲れ気味に天野みこがぼやいた。
「でも、困ってる人が居るので……怖いけど頑張らなきゃ……」
 雨よけのシートを避けた板造りの荷台の縁に捕まりながら、俯き気味に呟くマナ。
「だからって、この格好は無いんじゃない? これじゃ戦闘しづらいじゃないか」
 依頼の話を聞いた部隊員に無理矢理持たされたという豪華なドレスに身を包んだダンデリオンが、頬紅も不要なほど頬を染めて反論する。
 彼女は一番目立つからと現在御者を務めている。作戦が始まったらクーフーリン(トークン)と御者を交代して隣に移動する予定だ。
「でも似合うよ~? ボクも村で調達しないで街でお嬢様っぽいの買ってくればよかったよ」
「そうですね……。でもお化粧は楽しかったです……」
 荷台に乗るマナとみこは村で調達した村娘風の衣装に着替えていた。それでも囮に映えるマナには祭りで着るような余所行き風のワンピースを借りてきたのだが。
「まーまー、なんでもいいじゃない。面白くなりそうだしね~♪」
「ね~」
「あんたは喋っちゃダメ」
「ちぇ~」
 馬車に併走するフェンさんと白麒麟(茶色くペイントして馬に偽装済み?)は、いつも通りのマイペースぶりである。
「ところで、村での情報じゃそろそろじゃないか?」
「そうだね~。クー召還しよっか~」
 冷静に周囲を観察していたダンデリオンに促され、揺れる荷馬車で立ち上がろうとしてすっころぶみこ。
 そろそろ、作戦開始。




「どうやら、見張りは二人みてぇだなぁ」
 岩壁沿いに隠れながらアジトの様子を偵察してきた信吾の言葉に、ふむと顔を見合わせる奇襲組。
 砦と言い切るにはお粗末な急ごしらえらしき建物跡。周囲は開けているが荒れ放題で、街道からもそこまで近くない。いくらごろつき集団とはいえ、流石に風光明媚な場所にアジトを構えるほど暢気でもないのだろう。
 それでも一応道はある。
 当時使っていたであろう放置され放題の道が、向こうの林の間を抜けている。
「ちょっと強引だったでしょうか」
「普通の娘衆を装ってるんだ。道に迷ったと思うだろうさ。ヤツらがどう対処するかが問題だがな」
 不安に顔を曇らせる光速の以下略さんに、それとなくフォローを入れるセシル。
 もう少し奥まった場所で輸送機の整備をしていたソラコニオンが、手持ちぶさたになったのかてってけと軽い足取りでやってきた。
「つみにを ねらうのは いけません。わるいひとは せーばいです」
「積荷を盗むだけならいざ知らず、罪もねえか弱い女子を捕らえて危害を加えようってのは見過ごせねえ。海の義賊として、ここは一肌脱いでやるぜ」
 てんてん跳ねながら同業者への同情らしき主張をするソラコニオンに、全くだと腕組みをして頷くセシル。微妙にズレているがお互い気付いていないようだ。
「向こうにも言い分があるかもしれませんが、それは捕まえてから衛兵に説明してもらいましょう」
「ま、丁度居合わせちまったのも何かの縁だしなぁ……、と」
 光速の以下略さんの話にうなじを撫でながら返事していた信吾は、アジトの動きを感じ取り、足音を忍ばせて確認に向かった。




「あ~あ、早く見張り交代しねぇかなぁ」
「酒呑みてぇ~~~~、酒ぇ!」
 場面変わってアジト前。
 見張り当番の二人は、既に中で始まっている酒盛りに恨めしげなグチを零していた。
「今日とっつかまえた可愛い子ちゃんに酌させてんだぜきっと。あー羨ましい~~」
「アン? お前あんなガキが好みなのかぁ? 見た目はまあまあだが、オレは街の女の方が趣味だね」
「熟女好きめ」
 小バカにした目で見る仲間にジト目を返す。
 あ~あ、何処かにカワイコチャンでも落ちてねーかなぁ。
 まだ林の上に浮かぶ太陽を見つめ埒もないことを考えた時、風に乗って遠くから女の笑い声が聞こえてきた。
 一度は幻聴だろうと笑い飛ばした相方だったが、よくよく耳を澄ましてみれば確かに複数の女の声が聞こえてくる。
 二人は顔を見合わせ思案すると、熟女好きの方が声のする林の向こうへ様子伺いに走り出した。

 程なく、酒盛りをしていたお頭に報告が入った。
 護衛の男が一人付いただけの、身なりの良い娘と使用人らしき娘達を乗せた荷馬車がこちらへ向かってやってくると。
 どうして身なりの良い娘が荷馬車に乗っているのか、どうしてこんな街道を外れた道を通ってくるのか。
 そんな疑問を気にするような素面の人間はここには居ない。
「身なりのいい女に使用人の娘っこ。いいじゃねぇか。てめぇら準備しろや! カモ共をふん捕まえに行くぞォ!」
「アジトがバレてはつまらんからの。一人も逃がさんがよいわ」
 ご機嫌に大斧を振り上げる親分に、他人事のように入れ知恵する髭の年寄り。
「バズ爺よォ、いつまでも酒呑んでねぇで支度しろつってんだろうよ」
「わしゃ行かん。昼の仕事で疲れてしもうたわ。年を取ると節々が痛んでいかんよなぁ……ああ、腰が痛い」
「あーもうわーったよ。おら、行くぞシー」
「……」
 いつもの爺のワガママにウンザリしながら壁際の寡黙な男に声を掛け、動ける手下を引き連れてお頭は飛び込みの仕事に取りかかった。
 全く働き者だぜオレ様~と思いながら。

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